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 頭上に広がる空には、その存在を誇示しているかのように妖しい光を放つ月と、まばらに

浮かぶ濃い灰色の雲を除けば、何もかも呑み込んでしまいそうな深い闇が遠く、どこまでも

どこまでも広がっていた。

 

 麻生竜也(男子1番)糸屋浩之(男子2番)の二人は、月明かりに照らされた草むらの上

を歩いていた。二人から見て右手側には川が、左手側を少し進んだ先には鬱蒼と生い茂

る木々が見える。

 茶色に染めたショートヘアの竜也。その竜也よりも遥かに上背のある、坊主頭の浩之。

外見で共通している点といえば白いワイシャツと黒い学生ズボン、そしてクラスの全員に支

給されたデイパックぐらいなもので、それ以外の部分で似通っているものは全くと言ってい

いほどなかった。

 

「なあ浩之よー、さっきからずっと歩いてるけどまだ着かねえのかよ」

「そう言われてもな……。この地図だけじゃ正確な距離も分からんし、ここに着くまでにどれ

くらいの時間がかかるのかも分からない。まあ、川沿いに歩いていけばそのうち着くだろ」

「だったら走っていきゃあいいじゃねーか。その方が早く着くだろ」

「アホ。そんなことしたら他の連中に気づかれちまうじゃねえか。ここは慎重に、それでいて

できるだけ早く移動するんだよ」

「けっ、面倒くせーなぁ」

 小学校からの仲であり、普段からツルんでいる仲間と行動しているということが若干緊張

を和らげているのか、二人の表情にそういった感情は見られなかった。逆に、自分たちに

は怖いものなんてないといった風な、自信に満ちた表情にさえ見える。

 

 この辺りは、一組の生徒全員に配られた地図の見方で言うとC−02とD−02のちょうど

境目付近になる。二人はそのエリアを川沿いに歩き北上していた。すぐ横の土手を降りる

と、闇のせいでほとんど黒にしか見えない川がゆるやかな流れを見せている。少し離れた

場所には、これもまた夜のせいで黒にしか見えない森が広がっていた。

 

 二人がいる近辺のエリアは完全に森の中というわけでもなく、かといってホテル一帯のよ

うに整備された場所というわけでもない。樹や建物のような遮蔽物がないわけではないが、

開けた場所であるため敵に見つかりやすいとも言える。ようするに、とても中途半端な場所

だったのだ、ここは。

 

 とは言っても、二人には恐怖や不安、負ける気などは一切なかった。誰か襲ってきても

返り討ちにしてやれる自信があった。

 

 その大きな要因となっているのが、竜也の頭に被さっている奇妙な形のゴーグルと、浩之

が手にしている奇抜な形をした銃である。竜也に支給された武器はサーモゴーグルという

もので、それを掛けていると周囲の熱源を探知することができるらしい。これは主に視界が

悪くなる夜に使用される物で、どこに隠れていようと熱源を探知することにより、見つけ出す

ことができる。探索にはうってつけの道具だった。

 

 浩之に支給された武器は、ステアーAUG A-2という名の黒いアサルトライフルだった。

他のアサルトライフルに比べて小型で命中精度が良く、プラスチックフレームを使用してい

るため軽量化にも成功している、という代物だ。他の銃のようにセミオート、フルオートの切

り替えレバーがなく、トリガーの絞り具合でセミ/フルが変化するという独特の構造を持っ

ていた。

 

 しかし、そんなことは些細な問題である。自分たちの手にはアサルトライフルという充分

すぎる戦力があるのだから。既に弾は込められており、いつでも発射できる状態になって

いる。

 これがあればどんな奴が相手だろうと負ける気がしない。例えそれが、あの渡良瀬道流

(男子18番)であったとしてもだ。

 

 このプログラムにおいて最も注意しなければいけない相手。それは渡良瀬道流以外に

いないだろう。同じ不良ということもあり、二人は幾度となく道流と戦い、そして敗れている。

故に、彼の強さ、恐ろしさもよく知っている。

 

 だからといって逃げるというわけにはいかなかった。互いに殺し合い、最後の一人になる

のを競うというルール上、道流が勝ち上がってくるのは当然のことで、自分たちもまた当然

のように勝ちあがって行く自信がある。そうなれば、自分たちはいずれ道流と戦わなければ

ならなくなる。あの鬼のような強さを誇る男に。

 

 だから竜也と浩之は、自分たちのリーダーが”こういう事”をやろうとしているのだろうと

薄々感づいていたし、それが確信に変わっても特に驚いたりはしなかった。あの人が、

神野威(男子15番)がこうしてくる事は意外でも何でもなかったし、こうする他に道流と対等

に渡り合う――いや、道流に勝つ方法はないだろうと、二人もよく理解していたので。

 

 威は勝負に勝つためならば手段を選ばない。勝利を得るために、その時の状況に応じ

最善かつ最も効率の良い作戦を考え、一変の慈悲も見せず、圧倒的な力で容赦なく敵を

叩き潰す。そんな威だからこそ道流の実力は熟知しているし、彼と対峙し、その末に立って

いることができる方法はこれしかないと結論付けていた。だからこそ威は片桐裕子殺害の

騒ぎに乗じ、萩原淳志(男子13番)を含めたメンバーに向けて『A−01にある橋に集まれ』

と囁いたのだ。

 

 三年一組に所属するレギオンのメンバーが集合する意味。それは先にも述べたとおり

道流を倒すためだが、きっと威はそうは答えないだろう。道流だけを倒すためにこうして

集まったということは、自分たちが道流よりも弱いということを暗に認めてしまうことになる

からだ。不良は自分たちの面子――いわゆるプライドを何よりも大事にする。ナメられてい

たら話にならないからだ。

 それに威は人一倍プライドが高く、二人が知る誰よりも道流のことを嫌っていた。そんな

彼が遠回しに”自分たちは道流よりも格下だ”なんてことを口にするわけがない。

 

 

 

 視界を占める平野の割合が徐々に小さくなっていき、逆に木の割合が大きくなっていく。

北上するにつれ、自分たちがこれから森の中に入って行くんだという事実を認識させられ

た。先程とは比べ物にならないほど遮蔽物が増え、草木や葉の匂いが濃くなってきた。

「竜也、周りに誰かいるか?」

 浩之の言葉を受け、竜也はサーモゴーグルを装着して周囲をぐるっと見渡す。

「いや――見える範囲には誰もいねぇよ。人間っぽい温度反応がねぇし」

「そうか」

 アサルトライフルを所持し、ケンカの実力なら誰にも負けないであろう威と合流できると

分かっていながら、二人の身体と心は徐々に張り詰めていた。先程まで何度も下らない話

をしていた竜也はめったに口を開かなくなったし、浩之の心臓は自分でも自覚できるほど

に脈打つ回数が増していた。

 

 それは、竜也、浩之、淳志の三人が初めて威と会ったとき――彼に完全な敗北を喫した

時と似ている感覚だった。

 

 今から二年前の、レギオン結成のきっかけとなった出来事と。

 

 

 

 

 

 竜也、浩之、淳志の三人は小学生のときから行動を共にすることが多く、通っていた小学

校ではかなりの不良生徒だった。来る日も来る日もケンカばかりで、何か気に入らないこと

があるばすぐに怒声を上げ、拳を振るう。生徒ばかりか、教師も三人を恐れ、まともに接し

ようとはしなかった。だが三人はそんなことを気にしちゃいなかった。煩わしい教師連中が

ごちゃごちゃと文句を言ってこないのは願ってもないことだし、何よりも相手より上に立って

いるんだという優越感を得ることができた。

 

 周りにいる誰かは何か得意なものを一つは持っている。けれど三人にはそれがなかった。

自慢できるものが、心の底から夢中になれるものが、自己証明を出来るものがなかった。

そういった面での劣等感がそうさせたのか、三人は自分がここに存在していることの証とし

て『暴力』を選択した。ケンカに勝てば良い。相手よりも強ければ良い。誰にでも分かる単純

な図式。竜也も、浩之も、淳志も、それを証明し損ねたことはなかった。それでしか自分を

表現できない彼らにとって、ケンカで勝つこと――すなわち”強さ”は決して譲ることができ

ないものだった。

 

 彼らは自分たちが一番強いと思っていたし、負けるなんて考えていなかった。実際、三人

でいればどんな強い相手も倒すことができたし、それはこれからもずっと続くものだと思って

いた。

 

 それが間違っていると気付かされたのは、中学に入学したばかりの頃。

 他の小学校から集まってきた、それなりに名の知られている”同類”の生徒たちを片っ端

から倒していた三人は、地元でもそれなりに噂になっていた真神野威という少年を校舎裏

呼び出した。

 

 威とは小学校が別だったが、彼の噂くらいはいくつか聞いたことがあった。自分たちと同じ

くらい――もしくはそれ以上に凶悪な少年のことを。

 簡単に勝てるとは思っていなかったが、負けるとも思っていなかった。今までだって三人

で何とかしてきたし、今回もそうなるだろうと思っていた。

 

 しかし。

 

 その日、三人ははっきりとした――どうあがいても覆しようのない、格の違いというものを

見せつけられた。

 最初はいつもと変わらなかった。威圧もかねて、竜也が相手に罵詈雑言を浴びせかけ、

「おら、何とか言えよ」と言いながら相手の胸倉を掴んで壁に押し付けていた。いつもの流れ

ならば相手がここで「ふざけんな」とでも言い、その直後に竜也が相手の顔に拳を入れて、

一方的なケンカになって終了するというものだった。

 

 ただ、今日ばかりはいつもと勝手が違った。真神野威という少年は竜也の挑発を受けて

も涼しい顔をしており、淡々と竜也の言葉を受け流していた。まるで眼中にもない、といった

風に。

 無論、こんなことをされて黙っていられる竜也ではない。頭に血が上っていた彼は意表を

付いて膝蹴りを叩き込もうとしたが、それよりも先に威のショートアッパーが竜也の鳩尾に

めり込んでいた。顔を歪める竜也に、威は容赦なく二発、三発と拳を叩き込む。

 

 そうして竜也が地に這いつくばるまで、一分と掛からなかった。

 

 それを目の当たりにした浩之、淳志の二人はすぐに事態を理解することができなかった。

自分たちの知る限り竜也が倒された事なんてなかったというのもあるが、あの竜也がここ

まで一方的に殴られて負ける、なんて信じられなかった。

 

 それと同時に、二人は本能的に察知した。真神野威という少年の強さ、脅威を。

 浩之と淳志は二人同時に威に挑み――そして、敗れた。三人で一人に挑み、手も足も

出ずに負けた。完全な敗北――自分自身にかける言い訳すらも出てこなかった。

 

 三人は敗北とともに、自分たちとはレベルの違う男がいるんだということを思い知った。

アマチュアの世界で活躍する人間が、世界のトップで活躍する人間を初めて目にしたときの

ような驚愕と衝撃。

 悔しさはなく、心のどこかにぽっかりと大きな穴が開いたような喪失感が三人の中にはあ

った。

 

 それからちょうど三日後、三人は威に声をかけられた。

「お前ら――俺とチームを作る気はないか?」

 驚きを隠せない三人を前に、威は自分の考えを語る。何よりも強く、誰にも負けない圧倒

的な強さを持つチームを作りたい、と。そしてそれには人数が必要不可欠だと威は言った。

 不良が多いこの街において、何よりも強いチームを作る――それは理想論に過ぎず、幼

い子供が見るような夢物語のものだった。

 

 だが竜也たちは、そうは思わなかった。拳を交えることにより威の強さ、器の大きさ、一種

のカリスマ性を感じ取っていた三人は、いつの間にか威の話に惹き付けられていた。もしも

本当にこの街で一番強いチームを創ることができたのなら、それはどれほど心地のいい

ものだろう。今まで体感したことのないような爽快感。今まで見たことのない景色。この男に

付いていけば、自分たちでは到底目にすることができないものを見ることができるかもしれ

ない。威に対して向けられていた感情は、会う前に抱いていた不愉快さから次第に羨望へ

と変わり始めていた。

 

 それが、今や静海市最大となっている不良チーム『レギオン』始まりの瞬間であり、竜也

たち三人が威と行動を共にすることになった瞬間だった。

 それ以降、威のグループは目を見張るような活躍を見せ、凄まじい勢いでチームの人数

を増やしていくことになる。竜也たちが思っていた”今までに見たことのないものが見れるの

ではないか”というのも現実のものとなった。威と一緒になってから負けたことなんてないし、

警察に補導されたこともない。最初の敗北のときに思い知った、こいつは俺たちとは次元

が違うという思いもまた、間違ってはいなかった。

 

 だから竜也と浩之はプログラムという最悪の事態に陥っても、他の生徒と比べて比較的

平静を保っていることができた。あの威なら、こんなときでもきっとなんとかしてくれる。他の

奴らになんか怖くないような、そんな作戦を考えているはずだ。

 

 

 

 

 

 二人はそんな風に考えながら、デイパックの中に入っていた地図と方位磁石だけを頼り

に会場を川沿いに北上して行く。周りに立ち並ぶ木々は増え、頭上から差し込む月明かり

は木の葉に遮られまばらになっている。懐中電灯を付けたいところだが、そうすると他の誰

かに自分たちの居場所を知られる危険があったのでできなかった。それでも、竜也の武器

であるサーモゴーグルのおかげで夜道でも多少楽になっていたが。

 

「ちっくしょー、しっかしマジついてねぇよなぁ、プログラムなんて」

「愚痴るな。今さらそんなこと言ったってどうにもならないだろーが」

「でもよ、優勝できるのはたった一人だけなんだぜ? ってことはいつかはお前や淳志たち

とも戦わないといけないってことじゃねーか」

「……そうなるな」

「ケッ、俺はそんなの絶対ゴメンだぜ。どーにかして俺らだけでもここから脱出しねーと」

 

 ――そうだよな。優勝できるのはたった一人だけなんだよな。

 竜也の言葉がきっかけとなり、浩之はプログラムにおける最も基本的なルールを再確認

する。

 優勝できるのは一人だけ。ということは、いつかは竜也や淳志、それに威とも戦わなけれ

ばいけないということだ。

 浩之は考える。いつか殺し合うときが訪れるのなら、何で威は自分たちと合流しようと考

えたのだろう。個人よりも集団でいた方が優位な面が多いし、威が人数で圧倒するという

戦い方を好んでいるのは知っている。

 

 しかし、その真意は?

 

 自分たちが思い描いている理由がもし”建て前”だったとしたら――威は何のために自分

たちを集めようとしたのだろう。

 

 ――何を馬鹿なことを。

 ややあって、浩之は思い浮かべた考えを打ち消した。自分が疑心暗鬼になってどうする。

そうやってチームの輪が乱れるのが一番危険なんだ。浩之はそう自分に言い聞かせ、今

考えたことを忘れることにした。

 

 すぐ横で水が流れる音と、闇の中からフクロウの鳴く声が聞こえてくる。

「そういやーここって森の中なんだよな……やっぱ蛇とかもいんのか?」

「さあな。でも一匹くらいはいるだろう。ここは山の中なんだから」

「やっぱそうか……俺って蛇とかミミズとか、ああいうウネウネしたもん苦手なんだよなー。

見るだけで背筋がぞくっとするっつーか……あー、考えただけで嫌になってきた」

 

 そんな会話をしているうちに、二人の目にコンクリートで作られた、十五メートルほどの長

さの橋が飛び込んできた。橋の周辺だけ開けた場所になっており、薄暗くて誰かは分から

ないが、人が二人ほど立っているのが見て取れた。

 

「竜也」

「ちょっと待て」

 竜也はサーモゴーグルを装着し、威が言った集合地点で間違いないであろう場所をじっと

見つめる。

「……二人、だな。橋のすぐ横に温度反応がある。それ以外に近くには誰もいない」

「威と淳志だな。――よし、行こう」

 二人は身を隠していた茂みから姿を出し、大きくはないが橋の横にいる二人に聞こえる

ような声を出す。

 

 

 

「二人とも、そこにいるのか?」

 それで橋の横にいた二人が身を強張らせた。一人は両手を地面と平行に上げ、こちらに

何かを突きつけているようなポーズをとっている。

「竜也と……浩之か?」

 その声は、自分たちがよく知っている萩原淳志の声だった。

「二人とも遅かったな」

 淳志の横から発せられた低い声は、二人の予想通り真神野威のものだった。鞘に収めら

れた大きなナイフをベルトに差して腰から吊るしているところ以外は、ホテルを出発する前

に見た威と何も変わっていなかった。

 

「悪ぃ悪ぃ。ちょっと慎重になりすぎたかも」

「ところで――お前が被っているその変なゴーグル、何だ?」

「ああ、これ? サーモゴーグルっていうんだってよ。温度を感知できるって武器だ。これを

かけていると暗いところでも、どこに誰がいるか分かるんだぜ」

「へえ、便利な武器じゃないか。俺はこのリボルバーだった」

 淳志は手にしていたS&W M629を掲げ、二人に見せびらかすようにする。わずかに差

し込む月光が銀色のフレームに反射し、美しい輝きを放っていた。

 

「浩之の武器はそれか?」

 威が尋ねると、浩之は何も言わずにこくりと頷いた。

「凄いなそれ。確かアサルトライフルってやつだろ? 本で読んだことある」

 自分のものよりも遥かに強力な銃を目にし、淳志は驚きを隠せないようだった。

「さて……全員集まったことだし、そろそろ話を本題に移すぞ」

 一言一句を確かめるような、低い重圧感のある声が三人の耳朶を打つ。

 

 チームのリーダーであり、頼れる仲間でもある男の声に淳志たち三人は威のもとへ視線

を集中させる。

「まあみんな分かっているだろうからハッキリと言わせてもらうが、俺はプログラムに乗るつ

もりでいる」

 いつもの淡々とした声で、いつもの冷静な顔で、威ははっきりとそう告げた。

「本気……なんだよな」

 わずかに揺れる声でそう呟いたのは淳志だ。つい先程威が口にした殺人行為への宣言

がまだ信じられないのか、それとも事実を噛み締めようとしているだけなのか。

 

「本気だ。俺はこんなクラスの連中にやられる気はない。幸い武器も当りが揃っていること

だし、そうするには絶好の状態だ」

 威が、その決断にわずかな揺るぎもないことを示しつつ言う。

「――さあ、お前らの返事を聞かせてくれ」

 威は凄絶な笑みを浮かべ、『レギオン』の中心に立つ人物たちにそれぞれの意思がどう

あるのかを問いただした。

 

 この言葉を聞いた瞬間、威以外の三人の顔がはっ、となり――すぐに意味ありげな笑い

へと変わった。

 それもそのはずである。威が今口にした言葉は、彼が淳志たちを仲間にする際に言った

言葉と全く同じものだったのだから。

 

 この時、浩之は先程自分が考えたことが杞憂であったことを思い知った。そう、始めから

心配する必要などなかったのだ。

 威は何も変わっていない。威は威以外の何者でもない。少しでも彼を疑った自分を恥じる

ように、浩之は小さく自嘲的に笑った。

 竜也、浩之、淳志の三人はお互いに頷き合った。ここに集まった時から、既に答えは決

まっていた。

 

 三人を代表し、淳志がその答えを口にする。

「俺たちのリーダーは威だ。リーダーの指示には従うさ」

 このプログラムにおいて、最悪にして最強のチームが結成された瞬間だった。

 

【残り35人】

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